伊那の旅

今日明日で連休も終わりですが、私はこの休みを利用して、長野の伊那市というところへ行って来ました。伊那市には、高円寺で円盤というお店をされていた田口史人さんが、新しく始めた黒猫というお店がありまして、その地には私の作品を出してくれたキコリレコード社長の犬風さんもいらっしゃる。円盤には散々お世話になっていますし、私の作品も置いて頂いてますし、一度お邪魔しなければ、というか、どんな町なのかとても気になってまして、行ってみたかった。そして、このタイミングで犬風社長と、AZUMIさんという、素晴らしい弾き語りシンガーの二人ライブがあったので、それも観たい、と思いまして、意を決して旅立ったのであります。

と言っても家庭の事情もありまして、妻子と共に松本へ行き、そこからソロ行動で伊那市へ、というルートを辿ったのですが、馴染みの無い土地あるあるなのか、距離感が全然わからないまま計画を立ててるので、一応グーグルマップとかで計算はしたものの、松本から伊那市が思ったよりも遠くて、ちょっと驚きました。長野はでかい。

電車から降りると、ホームから妙な看板が見えた。ユーは何しにこの伊那へ。この町から輩出された方々の名前を眺めながら、伊那市出身の知り合いがいたのを思い出した。もう何十年も前な気がするけど、俺イナ中出身だぜ、と何度か聞いた。稲中全盛期。サリンズというバンドをされていた。何となく時代が見えるでしょ。

駅から出てロータリーをまたいで、メインストリートっぽい方へ向かおうとしたら、黒猫が目の前を横切った。おお!!縁起が良いのか悪いのか、よくわからないけど、ようこそ!と言われた気がして、嬉しくなって一人で笑った。

ライブまでまだ時間があったので、駅前の和菓子屋で買ったお菓子を天竜川の畔で食べたり、伊那のソウルフードらしい、ローメンというものを食したりした。

これが本当に、どう説明していいのか分からない代物でして、???という感じで頭がいっぱいになったのですが、不味くて食えないわけでもないし、旨くて最高な感じでもない、ローメンとしか言いようのない味。甘くて、ボソボソしてて、羊肉の風味がして…なかなか忘れられない味になりました。

ローメンを食べた萬里というお店を出て、通り町商店街という名の通りを、アーケードに沿って歩いて行くと、黒猫がありました。

黒い招き猫に招かれ店内へ入ると、田口さんがレコードを磨いていた。ちょっとだけ挨拶して、本やレコードを見ながらライブの時間を待つ。レコード、絵本、季刊黒猫など購入。

永ちゃん一風堂加藤登紀子山崎ハコ森田公一など。ワールドパーティだけ浮いている。

ライブの会場となってたのは、黒猫の向かいの趣のある建物でして、というか通り全体が趣で出来てるような街並みなので、死にかけのシャッター商店街、みたいな言い方も出来るのかもしれませんが、どこへ行っても似たような地方都市に比べれば、不思議な空間が点在する、伊那市駅の周りは魅力的だし、田口さんが惹かれる気持ちも少しわかった。生まれ変わる途中なのかもしれないし、死に行く最期なのかもしれない。

元々、紙を扱うお店があったらしい、その建物の屋根裏の空間がライブの会場になっていました。

雰囲気抜群。犬風さんにも、AZUMIさんにも、ぴったりの場所だった。演奏も素晴らしく、わざわざ足を運んだ甲斐はあったと思う。わざわざ足を運んだ、という事も含めて楽しんでると思うので、甲斐はあった、という言い方は違うかもしれないけど、とにかく良いライブでした。

犬風さんは最近、反戦歌を集めた作品を発表されてて、YouTubeでも聴けます。タイトルトラックの「折れた矢」という曲がすごく良くて、それを聴けただけでも、行って良かった。

 

ライブが終わって、その日のうちに松本のホテルまで帰る事になってたので、一時間に一本くらいの電車を乗り継いでローカル線の旅をしたのですが、これが凄く良かった。駅に人がいない。電車も来ない。来ても誰も乗ってない。気持ちいい。人には孤独が必要だ。みんな勘違いしている。孤独感ほど、心に効く薬はない。何もかも洗われるぜ。

次の日に、そんな事を妻に説いていたら、あなたは毎日、私と娘に付きまとわれてるからでしょ。人に拠るわよ。と、言われた。確かにそうだ。そうだけどさあ。どうだろなあ。