金の心

kikorirecords(キコリレコード) - kikorirecords

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あなたはアル中です、と診断を受けて、お酒をやめてみたのが、五年前の夏。病気なんてものは、診断された時に始まるわけじゃないし、特にアル中なんてものは、いまだに病気のカテゴリに入れるのが正しいのかどうか、よくわからない。私の感じ方の話ですよ。自分が普通じゃなくなってたのは、もちろん分かってたし、あんたに言われなくたって、病名つけてもらわなくたって、ちょっとまずい状況なのは、自分でもわかってますよ、ええ、そうですとも。そんな感じ。また飲んでいいですよ、みたいに、その内なるもんだとばっかり思って、ちょっと止めてみた。とりあえず、帰ったら冷蔵庫にあった缶チューハイを全部飲んじゃって、それからやめよう、と思って家に帰ったら、どこにもそんなものは無かった。わっはっは。隠されちゃった。参ったなあ、と思った。

 

 

もうその時点で、お酒というものは、何か快楽を得るため、リラックスするため、食事を楽しむため、そんな何かを得るためのツールではなくなってました。 自分が自分でいるために、必要不可欠なもの。無いと普通ではいられない。飲んでる状態が普通なので、素面の時は、気分が悪くてしょうがない。落ち込んでしまって、ただじゃいられない。だから、普通に戻すために飲み続ける。やばいなあ、これ死ぬなあ、なんて頭の片隅で気づいちゃいたけど、戻れやしない。まあ、今日明日はとりあえず大丈夫かな、なんて思いながら飲み続ける毎日。その普通でいるための道具を急に奪われた時、どうなるかというと、最低の気分で、無間地獄のような、永遠の時間の中に放り出される。そんな感じでした。とにかく、何をして時間をやり過ごしていいか分からない。ずーっと飲み続けていた時間の代わりに、何をしていいかわからない。うぎゃああ、どうしよう。まあ、とりあえず一杯飲むか。そうやって、また飲み始めちゃうものなのだなあ、と。

 

 

でも、私は飲まなかった。何故なのでしょう。それは、永遠の時間を潰す方法を見つけたから。曲作ったり、楽器練習したり、手慰みのように何年も何十年も適当にやり続けてた事を、無間地獄をやり過ごすために、改めてやり始めました。そして、一人で多重録音も始めてみたら、これが時間がかかってしょうがない。何て素晴らしい!最高の暇つぶしが、こんなに身近にあったじゃないか!飲まないでいられる!

 

 

そうやって出来ていった曲をまとめたものを、この度、世に出すことになりました。明日、エイプリルフールにカセットテープが発売され、CDもその後出すことになってます。志村ショックに揺れる日本に、山崎岳彦が問う!何を!いやわからないけど。「金の心」よろしくお願いいたします。中身に自信あり!聴いてみてね。よろしく。断酒中のみなさん!あなたに必要なのは時間をつぶすために熱中できる何かですよ!と、私は思います。