2021年の春

一昨日の東京はすさまじい強風で、帰宅のために自転車に乗った途端、風にあおられてガードレールに打ち付けられた。なので怖くなって、とろとろと歩道を走って帰ってきたのです。今日は今日で、今度は割と寒い。三寒四温

アル中の治療で通院してた頃、季節が春めいてくると、精神科の先生はいつも以上に患者の病状に敏感になってる感じがした。春にはきちがいが増えるなんて言ったりもするけど、実際のところ症状の悪化する人が増えるみたいで、私に対しても普段よりきつめに色々とぐいぐい聞いてくる感じがして、いやだなあ、先生。私はいつもこの通り、虫のような男ですから。何も起きやあしませんよ。はっはっは。みたいな不必要なおどけをしてた気もする。あんまり覚えてないけど。でも春になって何かそわそわしてくるのは、虫のような私だって同じことで、ていうか虫だからこそか。そんな心持を気取られるのが恥ずかしくて、少しふざけたのかもしれない。

人にもよるんだろうけど、精神科の先生は、すごく真っすぐ目を見て来るので、反射的に何かを見透かされないように、不必要に愛想笑いなんかしたくなるものだったけど、何かを見透かすのが仕事なんだから、今思えば当たり前のことだ。基本的には患者と話をして様子を見るだけで治療について決めていくんだろうし、コミュニケーションのエキスパートでなければ出来ないと思う。何となく話して、薬出すだけじゃねえか、なんて思ったこともあったけど、大変な仕事だな、と今は思う。

最初に担当になってくれた先生は、私と非常に相性が良く、一番きつい時期を乗り切る事に、多大な貢献をして頂いたのだな、と今は思う。当時は全くそんな事感じなかったけど、その先生が転勤でいなくなった後、担当になった医師とは全くそりが合わず、ストレス溜まるばかりで酒でも飲んでしまいそうだったので、病院へ行くのはやめた。あれ何年前だろ。相性は大事だ。

転勤して行く先生の最後の診療の時、私が録音してた曲をCDRに焼いて差し上げたら、本当はだめなんだけど、と言いながら受け取ってくれた。完成した作品も渡したいもんだけど。もうすぐ一年経つのか。早いなあ。