虫の心6

極私的エロス・恋歌1974という映画がありまして、ゆきゆきて神軍という映画を撮った原一男という人の映画です。神軍の方は、知ってる方も多いのではないでしょうか。私も神軍の方から入ってすごくショックを受けて、極私的エロスに辿り着いたのですが、この映画には、もっとショックを受けた。昔付き合ってた女性を、今付き合ってる女性と追いかけたドキュメンタリーなのですが、この昔の彼女がとにかく強烈な人で、目が全く離せない。一人で出産するシーンとか、踊るシーンとか、忘れられない場面は色々あるのですが、一番印象に残ったのは、映画の終盤で彼女の語った言葉でした。自分がやりたい事を、本当に分かってる人間と、分かっていない人間との間にある差は、ものすごく大きい。私は分かっている人間だ。そんな事を早口でしゃべるのですが、二十歳そこそこだった私は、その言葉を聞いて、ものすごくショックを受けた。俺はたぶん、分かっていない人間だ。なぜだろう。それから四半世紀。事ある毎に思い出しては、何でそんな風に思ってしまうのか、考えてきたのです。

 

そして、現時点で辿り着いた答えが、虫の心なのです。何かプレッシャーを受ける度に心を閉ざしているような人間に、自分のやりたい事が分かるわけがない。やっぱりそれは、あまりいい事だとは思えないし、やめた方がいい。しかし、どうやっても治しようがない、ろくでもないシュートフォームみたいなもんで、なかなか簡単には、凝り固まって体に染みついたやり方が変わるものでもない。何かを感じる事を拒否した心は、もう何も感じ取れなくなるという事もあるでしょう。さながら、壊死した手足のように。硬く乾いて血色を失った肝臓のように。ほんの少しでも、そんな状態からは離れたい。そして、他の虫使いの存在を感じ取ってしまう虫使いたる私は、虫使い全員で向こう側へ行きたいのです。自分のやりたい事が分かってる側に、みんな揃って行こうではあ~りませんか!今こそ団結の時だ!

 

虫使い協会。断酒会とハンター協会の間くらいのものでしょうか。一日断酒を行いながら、キメラアントのような大敵と戦う。虫なのに。そんなものが仮にあるとして、協会員みなの導き、象徴、団結のために、何が必要でしょうか。我々は弱い人間だ。いや虫だ。このままでは灰色の冬が来て、干乾びてしまうだけなのだ。さあ、歌え、戦いの歌を!!そうだったのです。私が作っていたのは、ユナイトのための、協会歌だったのです!聴け!虫の歌を!


KCD-005 山崎岳彦 金の心 2020年5月発売!(ダイジェスト)

 

(完)